永井にある、井出のお宮のあたりには、不思議な葦が生えています。葉が一方しかついていないのです。
むかし、むかし、このあたりは、一面の沼地でした。いつも美しく澄んだ水をたたえており、村の人々の憩いの場所となっていました。
この沼地に、雁の群れが毎年、やってきたそうです。冬をこの地で過ごした雁たちは、春先になると、海を渡って帰っていきます。
しかし、長い旅の途中で力尽きて海に落ちていく者もいたそうです。
ある時、雁たちは、井出のお宮の神様に、お願いをしました。
「帰る途中、疲れたら葦の葉を海に浮かべて羽根を休めたいので、葉を1枚ください」
神様は、「葦の葉を全部とって枯らしていけない。片側の葉だけを持っていきなさい」と許してくれました。
井出のお宮の葦の葉は、この時から片側がないそうです。